基本方針

ルネサスは、「国際人権章典*1」、国際労働機関(ILO)による「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に規定されている人権を最低限のものと理解し、国連人権理事会による「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、人権を尊重した事業活動を行います。また、人権、労働、環境および腐敗防止に関する国連グローバル・コンパクトの原則に賛同しています。

これらの国際的枠組みに従い、「ルネサス エレクトロニクスグループ行動規範」に基づいて、採用・人材育成・処遇など、雇用に関する全ての面において人権を尊重し、人種、思想、信条、性別、年齢、社会的身分、門地、国籍、民族、宗教、障がいの有無などによる差別や差別的言動を行わず均等な機会を提供し取り扱いをすること、またセクシャル・ハラスメントや強制労働および児童労働などの禁止について明示しています。これをグローバルに事業を展開するグループ各社に周知徹底し、各国の関係法令遵守は当然のこと、人権教育や啓発活動を行っています。

*1 世界人権宣言、市民的政治的権利に関する国際規約、経済的社会的文化的権利に関する国際規約

ルネサスグループ人権方針

ルネサスは、これまでルネサスグループ行動規範に人権の尊重を掲げ、取り組みを推進してきました。近年、企業活動における人権尊重への取り組みの重要性は更に増していることから、ルネサスグループが人権尊重のため推進すべき具体的な取り組みをより明確にするため、2021年11月、「ルネサスグループ人権方針」を策定しました。本方針は、グループ全体で人権尊重の取り組みを推進し、その責務を果たす指針となるものとして、取締役会により承認されたものです。

ルネサスは、本方針に従い、サプライヤーおよびビジネスパートナーを含む当社の事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権尊重を推進します。また、今後も、状況や環境の変化に合わせて、適宜、人権方針を見直し、改善していきます。

picture_as_pdf ルネサスグループ人権方針

推進体制

2021年11月に「ルネサスグループ人権方針」を策定した後、グローバル一体となって人権尊重の取り組みを推進するため、2022年に執行役員兼CHRO(最高人材責任者)を責任者とした人権推進体制を設立しました。国内人事部門に事務局を配置し、各国・地域の人事部門とともに当社グループ内における人権リスクの特定、リスク評価、及び優先して取り組むべきリスクの抽出に着手しました。

また、人権方針の遵守状況や取り組みの進捗について定期的に取締役会で報告し、取締役会の監督を受けることとしています。全社のサステナビリティ活動を推進するCEO直下の専任の組織であるサステナビリティ推進室と連携し、人権についての取り組みの進捗状況について、ステークホルダーに対して継続的に透明性を持って開示します。

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Global Human Rights Promotion System

人権デューディリジェンスの実施

2022年1月より、ルネサスは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デューディリジェンスを開始しました。ルネサスグループやサプライチェーンにおける潜在的な人権リスクの特定、是正に向けた取り組みの検討および実行、モニタリング、情報開示等のプロセスを継続的に推進し、人権尊重の実現に向けて取り組みを進めます。

人権デューディリジェンスの活動プロセス

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人権デューディリジェンス活動プロセス

潜在的な人権リスクの特定

ルネサスは、人権に関する国内外の動向調査、人権関連のNGO 等のレポーティング、及び専門家からの助言等を通じて、ルネサスグループにおける潜在的な人権リスクや配慮すべきステークホルダーを以下のように特定しています。

潜在的な人権リスクおよび配慮すべきステークホルダー

潜在的な人権リスク 懸念事項(例) 影響を受ける可能性があるステークホルダー
顧客 従業員 サプライヤー従業員 コミュニティ
労働安全衛生 労働災害、劣悪な労働環境、従業員の健康状態の悪化   check check  
労働時間 長時間労働、強制的な残業、法定休暇の取得不足   check check  
差別(D&I) 属性による差別、弱者の差別、ハラスメント   check check  
結社の自由と団体交渉 労働組合の結成阻止   check check  
プライバシーの権利 従業員の個人情報・お客様情報の流出 check check check  
紛争鉱物 武装勢力への資金提供、地域の治安悪化     check check
賃金格差 低賃金、賃金未払い、不当な賃金控除   check check  
児童労働 ルネサスサプライヤー行動規範の不履行     check  
苦情処理メカニズムの機能不全 内部通報制度の機能不全、サプライヤーにおける
内部通報制度や苦情処理システムの機能不全
  check check check
強制労働 ルネサスサプライヤー行動規範の不履行     check  

人権尊重への取り組み

潜在的な人権リスクの特定と合わせ、ルネサスは、グループ社内やサプライチェーン上において重点的に取り組むべきと考えられる人権課題として以下の6項目を設定しました。以前から主要なテーマとして取り組みを進めていたものも含めて、これらの重要度が高い課題に対して、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、ステークホルダーの期待に応えるため、リスクの抽出・予防・軽減のため具体的な取り組みを進めてまいります。

1. 労働安全衛生

ルネサスは、「防災安全衛生基本方針」のもと、従業員の安全と健康を守ること、安全で働きやすく快適な職場環境を確保すること、業務の円滑な運営を図ることを目指しグループ一体となって取り組んでいます。

主な取り組み:労働災害件数の削減

ルネサスは、グローバルで休業労働災害の発生状況を把握し、情報共有等を行うことで災害発生の予防に取り組んでいます。「休業労働災害ゼロ」をグローバル目標として、グローバルに職場に潜むリスクの洗い出しに日々努め、全従業員が安心して働ける職場環境の維持に取り組んでいます。

library_books ルネサスグループ安全衛生の取り組みについてはこちら

2. 児童労働・強制労働の禁止(子どもの権利に対する方針)

ルネサスは、ルネサスグループ人権方針において、事業活動に関わるすべての段階において、いかなる形態の強制労働・人身売買は一切行わないことを定めています。また、特に子どもはその権利が侵害されやすい立場にあり、その人権に関して特別な配慮が必要であると考え、「児童の権利に関する条約」、「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、各国の法令に定められた年齢に満たない児童による労働も一切行わないことを定めています。

ルネサスは、企業活動において子どもの人権が尊重されるよう配慮し、児童労働をはじめとする子どもの権利侵害を回避すること、加えて、すべての子どもの権利の実現に向けた社会貢献活動等に取り組みます。また、ルネサスサプライヤー行動規範においても、児童労働や強制労働の禁止を定め、サプライヤーに遵守を求めております。

主な取り組み:サプライチェーンにおけるリスク把握

ルネサスグループでは、(1)取引金額、(2)調達品の代替可能性、(3)調達品種の特性から選定した取引先を対象に、ルネサスサプライヤー行動規範に対する遵守状況の自己診断アンケートを実施し、878社から回答を得ました(2021年実績)

行動規範には、労働に関する項目(雇用の自由選択/若年労働者/労働時間/賃金及び福利厚生/人道的待遇/差別/ハラスメントの排除)も遵守状況確認項目として定めており、児童労働・強制労働について不当行為を行う取引先はありませんでした。

今後も本活動を継続し、該当あるいは高リスクと判断した取引先に対しては、速やかに改善計画の立案を要請し、改善に向けた支援をしていきます。

picture_as_pdf ルネサスグループ人権方針
picture_as_pdf ルネサスサプライヤー行動規範

3. 労働時間

ルネサスでは、事業活動を行うすべての国の法令を遵守し、労働時間・休日・休暇を適切に管理し、従業員が心身ともに健康で働ける環境づくりを行います。

主な取り組み:長時間労働の削減、ワーク・ライフ・バランスの推進

  • 月途中の時間外の中間実績値を踏まえたフォローアップ等を実施し、長時間労働の削減を図っています。
  • 「ワーク・ライフ・バランスを意識した働く環境の整備」を活動方針として掲げており、毎年4~5月を「ワーク・ライフ・バランス推進強化月間」として、労働時間管理の強化や計画的な年次有給休暇の取得に向けた環境整備などの取り組みを実施し、「従業員の心身の健康」に重点を置いた活動を行っています。

library_books 働きやすい職場環境づくりについてはこちら

4. 責任ある鉱物調達

ルネサスグループ人権方針において、ルネサスは鉱物の調達に関連する人権侵害に加担しないため、責任ある鉱物調達に取り組むことを定めています。

主な取り組み:電子情報技術産業協会(JEITA)「責任ある鉱物調達検討会」に加盟、業界団体との連携による活動強化

ルネサスは、2022年4月に責任ある鉱物調達の実現に向けて設立された「責任ある鉱物調達検討会」に加盟いたしました。ルネサスは、責任ある鉱物調達を世界的に推進しているRMI(Responsible Minerals Initiative)メンバです。RMIと連携する「責任ある鉱物調達検討会」に参画することで業界との連携を深め、精錬所と精製所の特定を始めとする紛争鉱物問題へ対応してまいります。

picture_as_pdf ルネサスグループ人権方針
library_books 責任ある鉱物調達方針に対する取り組みについてはこちら
picture_as_pdf 責任ある鉱物調達方針

5. 結社の自由(労使関係)

ルネサスは、「結社の自由」を企業として尊重し、団体交渉権を含む労働基本権を保障しています。労働組合の結成が認められている日本では、当社グループ所属の従業員で構成されているルネサスグループ労働組合連合会が組織されており、国内における非管理職の従業員については、労働組合で非組合員と定められている従業員(人事担当や経営企画担当等)を除き、全員、同労働組合連合会に所属しています。

ルネサスは、同労働組合連合会傘下の労働組合と労働協約を結び、労働組合法の精神、即ち相互の基本的権利及び義務を尊重し、誠実と信頼を基調とした労使関係を形成・堅持すべきであることを双方が確認し、誠意をもってこれを遵守することを約束しています。

課題解決と持続的成長がより一層求められることから、緊密な対話も行い、お互いの立場を尊重して企業の永続的発展と組合員の幸せの追求に取り組んでいます。

6. 人権教育

従業員の人権遵守を啓発する活動として、国内においては、新入社員導入研修や各階層別研修等で、ルネサスの行動規範の理解促進カリキュラムを組み、人権に対する意識向上を図っています。また、国内全従業員を対象に、2019年には職場ごとのディスカッション形式、2020年はWeb研修で人権教育を実施しました。

2021年からは、これまで各国や地域にて実施していた人権尊重やハラスメント防止に関する教育について、ルネサスグループでグローバルに統一した教育システムを導入し継続的な人権啓発の教育を実施しています。2022年はハラスメント防止に特化したe-learningを実施し、対象となる全社員のうち、約90%の社員が受講しました。今後も様々な人権啓発活動を通して、従業員が当社の人権尊重方針を理解する取り組みを進めていきます。

人権を含むコンプライアンス教育受講率

  2022年
  管理職 管理職未満 合計
日本 95.9% 94.6% 94.8%
グローバル 90.1% 88.6% 88.9%

※生産工場の直接員を除く、間接員のみの受講率

今後の取り組み

これまでは、各国・各社ごとの活動を中心に、人権啓発の活動や取り組みを進めてきました。今後は、人事部門が中心となり、グローバルで一体となった人権尊重の取り組みを、より強力に推進していきます。

具体的には、2022年1月から取り組みを開始した人権デューディリジェンスのプロセスにおいて特定したルネサスグループにおける潜在的な人権リスクについて、今後、国・地域・会社・担当する工程等の観点も踏まえ、各所で優先して取り組むべき項目を抽出し、それを予防・軽減するための計画の立案、実行、モニタリング、および情報開示を行っていきます。

これらのプロセスを継続することにより、人権リスクを低減するための体制・仕組みの強化を図っていきます。また、取締役会による監督のもと、これらの取り組みを評価、必要な改善を行い、その実効性を高めていきます。

人権・ハラスメントに関する相談窓口

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ルネサスは、各拠点に、派遣社員を含むすべての従業員や取引先の従業員などが、人権・ハラスメントに関する問題や悩みを相談できる相談窓口として相談員を社内に設置しています。相談員の所属部署や氏名を、イントラネットや事業所掲示板などで周知するとともに、面談だけでなく電話やメールによる相談にも対応するなど、相談しやすい環境づくりに努めています。

人権・ハラスメントに関する相談窓口が、職場でのハラスメントの発生を確認、または直接従業員から相談・苦情の申し出があった場合は、速やかにその実態について調査を行います。問題の処理にあたっては、関係者のプライバシーや通報者の保護、機密の保持に十分配慮したうえで、問題や悩みの解決に向け、被害者の救済を最優先に対応しています。

過去の再発防止策の効果もあり、2022年度についてはハラスメントに関する問題は発生しませんでした。

SDGsへの貢献

ルネサスグループの人権に向けた取り組みは、以下のSustainable Development Goalsに貢献しています。

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8-Decent Work and Economic Growth

SDG 8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための迅速で効果的措置の実施、最も劣悪な形態の児童就労の禁止・撲滅を保障する。2025年までに少年兵の徴募や利用を含むあらゆる形態の児童就労を撲滅する。

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10-Reduced Inequalities

SDG 10.3 差別的な法律、政策、および慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

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16 PEACE, JUSTICE AND STRONG INSTITUTIONS

SDG 16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規および政策を推進し、実施する。