画像
Hiroki Ishiguro
石黒 裕紀
主幹技師
掲載: 2023年1月23日

前回、効率・品質向上の観点から「GitLab」というCI/CDツールの導入のお話をさせていただきました。もうひとつ、導入の経緯をお話したいと思います。2020年頃から広がったコロナウイルスをひとつの契機に、在宅ワークが広がりました。弊社でも設計者の健康を守るために在宅ワークの適用率の向上が必要でした。

在宅ワークの実現自体が大きな課題で、この課題を細分化したしたところ以下2点が具体的な課題と分かりました。

【どのように在宅ワークを実現するか】

①技術面(どのようなツールを使うか、どのようなネットワーク構成にするか、等)
②管理面(厳密な輸出管理をどのように維持するか、等)

①は以下のように考え対策を実現しました

  • 考え:
    • リモート環境を構築し、マイコンボードでのデバッグや評価が出来なければならない。
      このための適切なツールを探さなければならない。
      ソフトウェア開発の源流に近いアメリカのソフトウェア開発チームが「GitLab」を推奨している。
  • 対策:
    • 「GitLab」を日本やその他リージョンでも利用可能なように整備する。
      実際に考案したシステム構成例は前回お話させていただきました。

②は以下のように考え対策を実現しました。

  • 考え:
    • 「GitLab」に全設計データが集約される
      設計データの中には「暗号技術」「無線技術」「音声圧縮技術」などの輸出規制対象の技術が存在する。
      ルネサスは国内・海外・社内・社外の設計者と協力しながらひとつのソフトウェア製品を開発する。
      従来は輸出する対象技術および需要者を特定してから1件ずつ輸出管理を行っていたが、GitLabによるデータ集約/公開のケースでは、効率化のためより包括的な管理方法が必要になった。
  • 対策:
    1. 「GitLab」内のデータを輸出規制対象技術とそれ以外で明確にグループ分けを行う
    2. 設計者毎のアカウントに所属(国内・海外・社内・社外)を付与する
    3. A)B) を組み合わせることで、輸出管理に際し適切なアクセス制御を行う

①のみだと開発部門内のみで効率・品質が向上して終わるところ、②を整備したことで開発部門外のいろいろな接続パタンに適用することができ、結果として開発部門内外問わず、多くの設計者の在宅ワークの適用率を向上させることができました。私が所属する部門では2020年以降おおむね7割程度の在宅ワーク率を達成しており、直近1年ではさらに向上しています。また、同時に海外拠点のメンバやパートナーのメンバーも在宅ワークが可能になりました。さらに本記事を執筆している最中にも、シンガポールやベトナムにいる設計者たちが、武蔵事業所に設置しているリモート環境を使ってRXマイコン用のソフトウェアを開発していることでしょう。

今回の成果は開発部門だけでは得られませんでした。IT部門や法務部門と相談を重ねることで、様々な障壁を乗り越えていく必要がありました。大変でしたが、品質・効率向上に関する成果に加え、在宅ワークによるコロナウイルスリスクの低減も成果になりました。

コロナウイルスが広がったとき、私は開発チーム内の設計者を守りたいという一心でした。一定の成果が出てふと現状を見直したところ通勤が無くなったことによりライフワークバランスが改善するという副次効果も見られました。一方でコミュニケーション不足によるトラブルは増えたように思います。

新たな課題は新たな対策を考えるとして、この方向性を維持し、さらに最先端の開発技術を導入する等して、最新の開発スタイルを追従し続けることに挑戦していきたいと考えます。

この記事をシェアする